映画

【映画レビュー】貞子DX【ネタバレあり】

どんな映画?

日本のホラー映画、通称Jホラーの存在を全世界に知らしめた不朽の名作「リング」のシリーズ映画となります。『呪いのビデオを観たら一週間後に髪の長い白装束の女「貞子」に呪い殺される』という設定は、後に様々なホラー作品等にも影響を与えています。

ちなみに、原作は鈴木 光司先生の小説「リング」です。映画と小説では、全くといっていいほど貞子への印象が違うので、小説も是非手に取ってみてほしいです。

あらすじ

「見た者が必ず一定期間ののち死に至る」という“呪いのビデオ”の恐怖を描き、怨念がビデオを介して拡散されるという衝撃的な設定が世界中を震撼させた最恐ホラーの最新作。現代社会に適応しSNSで<拡散>される貞子の呪いと、24時間以内に<呪いの方程式>を解明すべく奔走する主人公たちの対決を描いた超体感型<謎解き>タイムサスペンスホラーがついに開幕する!!

貞子DX 公式HPより引用

推しポイント

ポップに描写される、悲惨極まりない結末

ネタバレになりますが、今作の貞子の呪いは「動画を見た人は24時間後に死ぬ」「24時間以内にもう一度動画を見ると、タイムリミットが24時間後に上書きされる」といった地獄のログインボーナス制度を導入しています。

結果的に、ログインボーナス制度を解明させた主人公一派ですが、呪いの解除方法については全く分からずじまい。呪いの動画がネットで拡散されてしまう。というオチでした。

映画では、タイムリミットに近づくにつれて接近してくる親切なアラート機能「貞子のような人」も一緒に、和気あいあいと家族でログインを日々繰り返す という、雰囲気だけはすこぶる和やかに描写されていました。しかし、今後続々拡散される呪いの動画を見てしまい、ほとんどの国民が、死の影に怯えながらの生活を強いられる事になるので、人類絶滅レベルで悲惨な結末です。

この結末の悲惨さと、描写のコミカルさのミスマッチ感がおもしろくも恐ろしかったですね。

呪いの制限時間の変更

呪いのビデオは当初【見ると7日後に死ぬ】というルールがあり、【その七日間で生き残る為に死力を尽くす】という映画の流れでした。しかし今作では、呪いの動画を見たら24時間後に死にます。きっと呪いの回線をADSLから光回線とかに切り替えたのでしょう。

このルール変更、案外悪くなかったです。今作は24時間制の地獄のログボ制度を導入しているので、今後主人公達は常に時間を気にしながら生きていくしかありません。24時間という絶妙なタイムリミットのせいで、ちょっとしたうっかりや、災害等で被災すると大量変死事件が発生しうるという状態が恐ろしすぎます。今後、国営放送とか、モニター付きの飛行船とか、「呪いの補給ポイント」が常設されたりするのかなぁ とか妄想がはかどりますね。

また、今作はポップ過ぎて見るに堪えないレベルのコメディ要素も押し寄せてくるので、そのノリが数日間に渡って展開されるとさすがにキツかったな とも思います。

謎解きエンターテイメントとしては〇

「リング」シリーズを、ほとんどの人はホラー作品として見ています。筆者もそうです。しかし、原作者である鈴木光司氏は「ミステリーのつもりで書いた」と話されているそうです。

1作目の「リング」をとっても、そういった目線で見るとミステリーとして見る事も出来ます。ただ貞子と、被害者の描写が怖すぎて筆者には恐怖しか残っていませんでしたが。

そういった点を知った上で見ると、謎解きとしても決して傑作という訳ではないですが、ドラマの「TRICKシリーズ」を見ているようなエンターテイメントが確かにそこにありました。

つまり、今作はかなりエンターテイメント(コメディ)に寄った構成ではあったが、「リング」シリーズとしては、原点回帰とも言える作品といっても過言ではないのでは?(過言)

少し気になった点

驚くほどに怖くない

前述したとおり、今作は少し気持ち悪い描写はあるものの、怖いシーンは皆無と言ってよいです。良く言えばファミリー向けだが、いったいどれだけの家族が一家総出で「貞子」を見に行くのか甚だ疑問である。

また、子ども騙しの爆音は何故か頻繁に出す。そのビックリさせてくる物も、テレビ局のマスコットキャラや白服のロン毛の一般人とか、怖いものでビックリさせようしてこない。何故なのか。

そもそも意図的に怖くないように作られている様子で、映画「リング」のように井戸の中のような重苦しい雰囲気が皆無です。ずっとおちゃらけたキャラクター達がワチャクチャしており、ホラーではなく謎解きエンターテイメントだと思って本作は見た方が良いです。

IQ200・・・?

今作の主人公は、IQ200の才女という事ですが、そのIQが発揮されるシーンがありません。劇中の活躍だけ見たら、単にちょっと記憶力のいい人です。

呪いのビデオへの考察も、一般人でも思いつく「サブリミナル映像や催眠映像の可能性があります!」なんて事を言い出します。いや、言ってる事自体は全然間違いじゃないんだけど、それ以上の詳しい言及がほとんど無いので、本当に賢いという印象が皆無。

そもそも、呪いビデオの解明は謎の助っ人「感電ロイド」がリモートでほとんどしてくれているので、このIQ200設定は必要だったのか・・・・。むしろ「感電ロイド」が遠隔で情報を得て推理するミステリーで良かったのでは?とさえ思わされましたねww

「念力」の貞子から「筋肉」の貞子へ

何作品もリングに関する映像作品は作られていますが、近年の作品では、貞子が4つんばいで追跡してきたり、飛びついてきたり、井戸の中にダンベルでも隠してるのか と思うくらい随分とフィジカルな襲撃を見せてくれます。

今作でもそのフィジカルは健在で、呪いのビデオを見た人を頭を掴んで井戸に落とそうとしています。

筆者の勝手なイメージですが、貞子は信じられないくらい気味の悪い方法やシチュエーションで現れ、相手が抵抗する間もなく念で人を殺す というイメージが染みついているので、「屈強な人なら返り討ちにできるのでは?」と思えるような最近の描写はいかがなものか とか勝手に考えてました。

総評(評価 )

ホラーである事を捨てて、エンターテイメントの1つとしての増殖方法に舵を切った貞子さん。ホラー映画好きとしては物悲しくも思いますが、本来の貞子の目的「生存、増殖」が、現実でも粛々と実行されている点はよく考えたら恐ろしい事でもありますね。

さて、鑑賞する人のスタンスによって評価が大きく分かれると思われる本作。筆者は貞子さんの目的を現代で成就させる最適手の1つを見せてくれた「貞子DX」、割と好きでしたよ!決して人にはオススメはしませんがね!

ABOUT ME
アの9
所有する漫画は1000冊以上。 ファンタジーやバトル物も大好物だが 登場人物がロクでもない目に遭う作品が本棚に目立つようになる。 逆に恋愛、青春物といった爽やかな漫画が極端に少ない。どうしてこんな曲がった性格になったのか…

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です